2009年8月11日火曜日

ヤン・ヘンドリック・シェーンの論文捏造事件

論文捏造 (中公新書ラクレ)
村松 秀
中央公論新社
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研究者のひよことして、論文捏造を読んだ。本書では、ドイツ出身の物理学者で、かつてベル研究所に所属していたヤン・ヘンドリック・シェーン(Jan Hendrik Schön)の論文捏造事件について取り上げている。この事件では、すでにSchönが筆頭著者の論文で、Nature7本、Science8本、Physical Review6本の論文が取り下げられている。2001年には、平均8日に1本のペースで論文が出版されていたという。

その事件を解明するために、インタビューを通じて、多方面から解明を試みている。アメリカ、イギリス、スイス、ドイツに渡り、Schönの論文が出版された出版社(Nature、Science編集部)、Schönの元職場(ベル研究所)、Schönの出身大学(コンスタンツ大学)、Schönの元上司の勤務先(ETH)に出向き、事件を調査している質の高い本だ。

捏造の犠牲者はたくさんいる。例えば大学院生とポスドクが犠牲者になった。有名な雑誌に出版された論文を元に、追試を行うことを要求され、出るはずもない研究結果を求められたのは、大学院生とポスドクであった。実験結果が失敗に終わったとして、指導教官から、大学院生やポスドクが責め立てられたらしい。その追試に費やされたエネルギーを考えると、捏造はみんなの時間を奪う行為で、責任は非常に重い。

さて実験結果は捏造だったとしても、Schönはたぐいまれなる「論理構築力」と「文章力」を持っていたはずだ。そうでなければ、結果を捏造しても、短期間に有名雑誌の論文のレビューアーを通り抜けることはできない。それが正しい方向に使われていれば、Schönは超一流の研究者になれたんだろうなと思って、残念な気持ちになる。

2009年8月8日土曜日

大阪から姫路へ移動、兵庫県立大学へ行く。

昨日の旅程:「大阪」→「姫路」→「兵庫県立大学工学部」→「姫路」→「東京」

まず大阪から姫路までJRに乗っていると、車中から明石海峡大橋と淡路島の両方が見えた。率直に世界一の吊り橋のスケールに感動した。一方で、約5000億円という建設費を考えたときに、こんな大橋はあまり作れないのだろうとも思った。また領土が分断されている国でしか、需要はないだろう。

姫路に着いて、駅前から出ているバスで、兵庫県立大学 書写キャンパスに向かう。この書写キャンパスには工学部しかないため、両者はほぼ同義である。簡単にキャンパスの雑感を書いておく。

  1. 移動手段:「神姫バス」。姫路駅から30分程度と360円かかる。バスの本数は、1時間に4本ぐらいある。
  2. 環境:キャンパスは、書写山の麓にあり、周囲は山に囲まれている。
  3. 家賃:書写キャンパス周辺の家賃は安く、1Kでも月に3万円程度である(東京では、駐車場を借りるだけでそれだけかかる)。生活費は安くすむだろう。
  4. 施設:県立大学の施設は、旧帝大に比べて古いままである。施設は老朽化しているが、耐震工事は進んでいない。トイレもほとんどが和式だ。県の財政状況が厳しいから、新しくできないとのことだ。
  5. 元単科大学:元は姫路工業大学であって、他学部との統合が行われていない。名前から見ると総合大学だが、書写キャンパスには、工学部しかなく、他の学部・学科とは分断されている。つまり違う学科の人と会ったり、授業を受けたりすることはできない。

そして帰る段に思った、姫路駅から東京への移動は不便である。東京方面の「のぞみ」は、1時間に1本だ。加えて姫路から東京までは、のぞみでも3時間強かかる。午後3時には姫路を出たから、自宅には午後7時ぐらいに到着できた。

日帰りで兵庫県立大学へ出張すると、往復の移動時間は乗り継ぎの時間を合わせて、10時間ぐらいかかる。可能だが、疲れそうである。

2009年8月7日金曜日

江刺研究室 最強の秘密

課題図書であった「東北大学・江刺研究室 最強の秘密」を今回の出張で読み切った。

【検証】東北大学・江刺研究室 最強の秘密 (理科少年シリーズ)
江刺 正喜 本間 孝治 出川 通
彩流社
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本書は4章構成であり、江刺教授を含めた3人の対談形式で進む。対談相手は、「メムス・コア」の社長と「テクノ・インテグレーション」の社長であり、2人とも東北大学との関係が深い。

目次は以下のようになっている。
<1章>江刺正喜教授の「理科少年」時代
<2章>江刺研究室の「強さ」
<3章>近代技術史と先端技術MEMS
<4章>MEMSビジネス

1, 2章が「江刺研 最強の秘密」の検証になっている。これらの章で、江刺教授の少年時代からMEMS研究に至るまでの経歴、また江刺研のマネジメント方法について説明される。江刺研究室の成り立ちについて説明され、一番興味深い章だった。

3, 4章は、技術とビジネスの話であり、ほとんど江刺研の話は出てこない。3章では、昔の技術がMEMSに利用される点を解説しており、技術寄りの内容。4章では、MEMSビジネスについての議論が行われ、今後のビジネスの方向を探っている。

結局、研究室の強さは、東北大の設備をオープンにして色々な人に使ってもらうところにある。企業の人にも自由に装置を使ってもらい、情報を江刺研究室に集約化して蓄積する。情報が集まった方が、MEMSの開発が進みやすいことは間違いない。

江刺研は、日本の大学で、もっとも設備のオープン化が進んだ研究室の一つだろう。そういう意味では、最強と言っても過言ではない。他の日本の大学は、色々なしがらみで、江刺研の真似ができないのである。

2009年8月6日木曜日

才能に恵まれない人の工夫

身体的才能に恵まれないが、工夫して活躍するスポーツ選手が好きだ。自分も才能に恵まれていないから、親近感が湧く。

最近で面白かったのは、田臥勇太だ(NHKのスポーツ大陸に出ていた)。彼は身長が173cmしかなく、バスケットボールをやる身体能力に恵まれているとはいえない。それにも関わらず、NBA選手の選手となった。しかしシュートの評価が悪かったのもあり、契約チームを解雇されてしまう。

田臥勇太にとって、シュートが課題だった。そこで彼がとった手法は論理的だった。シュートをよくするために、「シュートの質を上げること」と、「シュートの本数を多くすること」、と分解して考え、対策をしていた。このように分割して考えると、漠然と「シュートをよくする」と考えるよりも取り組みやすい。僕は素人目に思った。

才能があって、勘で結果を出しちゃう人もいるが、あまり自分には参考にならない。自分に才能がないからだ。才能がなくても工夫する人の方が、自分に近くて参考になる。

私大は国立大よりも教育大学的な側面が強い

大阪に出張中です。某有名私大の教授に面会して、装置と研究室を見学させてもらいました。私学の教員は思ったより大変そうです。

教授の説明によると、国立大学とこの某私大では、研究できる環境に差があり、この私大では教育大学の側面が強いそうです。例えば、以下に差があります。

  • 授業が多い。助教でも授業が1年に9コマある。
  • 面倒を見る学生が多い。4年生だけで12人。
  • 装置のメンテナンスが大変。技官がほとんどおらず、教官がメンテナンスをする。
  • 博士課程の学生が少ない。

面会した教授が言うには、「今あなた(私)がいる環境が日本で最高クラスだから、移動すれば、研究環境は必ず下がる」とのこと。そして今まで自分は、恵まれた環境にいたことを知った。

2009年8月2日日曜日

埼玉県草加市の花火大会8/1

ようやく懸案の「博士論文の本審査」が終わり、開放感にひたりながら、草加市の花火大会に行ってきた。花火大会の会場は、草加市の外れで、自宅から自転車で30分の距離にある。

この花火大会のよいところは、花火をかなりの至近距離で見られるところだ。打ち上げ場所から300メートルぐらいの距離まで近づける。これだけ近づくと、花火が球状に爆発しているのが分かる。音圧も、肌で感じられるほど大きい。他にもっと規模が大きい花火大会はあるが、遠くからしか見られず、平面的にしか花火が見られない。

参加者の主軸は、中高生だっただろう。20代後半の人はあまり見なかった。たとえるなら、そう、カルピスウォーターのようだった。

これは中学生ぐらいからの考えだが、学祭は別として、祭りの屋台の食べ物は極力食べない。なぜならコストパフォーマンスが悪いからだ。買うなら、近隣のコンビニと決めている。

コンビニでは、花火大会に合わせ、店の駐車場でビールとか食べ物を売っている。普通、コンビニで売っているものの方が、屋台で売っているものよりも安い。だから会場の周りで打っている屋台の食べ物は買わなくなる。

と思って、今回もファミリーマートに行ったら、沖縄から来た「South」というバンドが駐車場でライブをしていた。下の動画のような「I LOVE うちなぁ~」という歌を歌っていた。これが目の前で見られたので、面白かった。

休みの日は、研究以外にフィールドを広げていくのが、僕は好きだ。

2009年8月1日土曜日

「パラグラフ」の概念がない

最近、急に日本語の本を読むのが苦手になった。なぜかというと、ほとんどの文章がパラグラフの概念が意識せずに書かれ、論理がつかみにくいからだ。例えば、段落中の文は1, 2文であり、そのような段落が無数に続いている。それぞれの段落には意味がない。1文毎に改段落をすると、主張や根拠がはっきりした文章を書くのは難しい。

英語の発想の文章は、主張や根拠がはっきりした文章を書くのが簡単で、論旨を読み取りやすい。それは段落の文章の順序に意味があるためだ。主張は段落の1文目に置かれ、続く文に、その主張をサポートする根拠を並べる。この形をとると、論理的な文章が書きやすい。

なぜ日本人にパラグラフという概念が意識されないかというと、 パラグラフに関する教育がないことが大きい。国語の授業では、パラグラフで文章を書くことを教えられない。大学の学部でも、教えられることはない。だから単に大学を卒業しても、書けるようにはならない。

日本語でパラグラフを意識した文章が増えて欲しいと願う。文章教育で、直感的な考え方だけでなく、論理的な考え方も身につけられる。教育改革で、ここを重点的に攻めると、日本も変わるんじゃないだろうか。

 
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